糖尿病の眼合併症
糖尿病は体だけでなく目にも多大な影響を与える病気です。糖尿病を発症した際に、合併症として挙げられる病気は『網膜剥離』『白内障』『緑内障』『眼筋麻痺』『角膜症』などがあります。中でも最も危険性をはらんでいるのが『網膜症』です。網膜は目から入ってきた光を感じるための重要な組織で、網膜が機能しなくなると視覚機能の低下を招くことにつながります。『網膜症』の進行状況は「単純網膜症」「前増殖網膜症」「増殖網膜症」の三段階に区切られています。
●単純網膜症は初期の病状のことで『毛細血管瘤』という血の瘤が網膜の中にでき、出血すれば点状になって現れます。血液に含まれる脂質が網膜に残り、シミを作りますが、この段階ではまだ自覚症状はなく見逃されがちです。糖尿病に気づいた際は、眼の精密検査を定期的に受けるなどして出血がないかの経過観察をするようにしましょう。治療は内服薬で血糖値を下げ、出血が認められる場合は止血剤や血管拡張剤を投与して病状を観察します。
●前増殖網膜症は『単純網膜症』が更に進行した状態です。出血が多くなると血液が足りず、部分的に虚血症状を起こし白いモヤとなる『軟性白斑』が見られるようになります。「目がかすむ」などの自覚症状が現れますが、何も起こらないことも多々あります。治療法はレーザーをあてるレーザー光凝固療法を行います。この段階での治療は失明を食い止める重要なタイミングと言われています。
●増殖網膜症の段階までくると、出血から起こる虚血症状を和らげるために新しい血管が伸び始めます。ですが、血管を必要としない硝子体にも血管が伸びるので硝子体出血を引き起こすようになります。また、血管から漏れた成分が網膜と硝子体を癒着させる増殖膜を作るので、網膜剥離を引き起こしやすくなります。症状は極端な出血か網膜剥離が起きない限りありません。治療はレーザー光凝固療法のほかに外科手術も行います。
糖尿病が目におよぼす影響は大きいですが、自覚症状があまりなく手遅れになるケースがあります。現在、糖尿病の治療を行っている方、もしくはその疑いのある方は糖尿病の治療に合わせて眼科検診を受け、目の状態も把握するようにしましょう。